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身体のしくみとはたらき
身体のしくみとはたらき
著者名 著者 増田 敦子(了徳寺大学医学教育センター教授)
発行年月日 2015年3月23日
判・頁数 B5判 200頁
ISBN 9784907176181
定価(10%税込) 定価 3,300円(10%税込)
在庫 在庫あり 
書籍概要
看護をはじめとして医療に携わる者にとって、からだの構造(仕組み=解剖学)を知り、その機能(働き=生理学)を学ぶことはとても大切なことだが、人体標本と向き合い、一つひとつの名称を暗記するだけでは、人体の面白さや不思議さがみえてこない。本書は、臨床で役立つ想像力にあふれた知識を提供し、からだの仕組みと働きが楽しく理解できる。
書籍目次詳細
第1章 生体 としての人体  9
第1節 なぜ、解剖生理学を学ぶのだろう?  10 第2節 生きているということ  11 ◆1エネルギーを生み出すには酸素が必要  11 ◆2エネルギーの源、ATPって何?  11 ◆3生命現象の基本はヒトもアメーバも同じ  13 第3節 人間の身体を構成する細胞  15 ◆1細胞の中には何があるの?  15 ◆2細胞にとっての国境;細胞膜  17 ◆3細胞を介した物質の移動  18 第4節 身体の中の社会  21 ◆1身体の中の海  21 ◆2細胞が過ごしやすい環境とは?  24 ◆3体内社会を支える物流システム  26 ◆4文化活動を可能にする肝臓のはたらき  26 第2章 血液の流れから理解する  29 第1節 24時間はたらく体内の物流システム  30 ◆12種類の道路;動脈と静脈  32 ◆2肺循環と体循環  33 ◆3心臓の構造と大きさ  34 ◆4刺激伝導系  36 ◆5心臓の筋電図;心電図  36 ◆6心周期  38 ◆7心臓から出る血液量の指標;心拍出量  40 ◆8血液が移動する力;血圧  41 ◆9毛細血管での物質交換  45 ◆⓾生体を流れるもうひとつの川;リンパ管  47 第2節 物流システムの主役「血液」を知る  52 ◆1血液は生体内で唯一の流動性組織体  52 ◆2血液の成分を知る  52 ◆3生体防御に必要な白血球  54 ◆4血液が固まるしくみ  55 ◆5酸素を運ぶ赤血球  58 ◆6血液細胞はどこでつくられるか  59 第3章 食物の流れから理解する  61 第1節 食べるということはどういうことか  62 ◆1食物;生体のエネルギー源  62 ◆2食物;身体をつくるもの  63 ◆3それぞれの栄養素の特徴  65 第2節 食物の旅  74 ◆1口腔から食道  75 ◆2胃  79 ◆3小腸  81 ◆4旅のおわり  89 第3節 栄養素の代謝  91 ◆1肝臓  91 ◆2栄養素の代謝  95 ◆3大腸から肛門へ  104 第4章 ガスの流れから理解する  107 第1節 呼吸のしくみ  108 ◆1呼吸運動のしくみ  109 ◆2肺から出入りする空気の量;肺気量  110 ◆3空気の通る道筋をたどる  112 ◆4血液によるガス運搬  116 第2節 呼吸の調節  118 ◆1血液ガスの調節  118 ◆2血液pHの調節  119 第5章 体液の調節から理解する  121 第1節 血液を浄化する腎臓のはたらき  122 ◆1泌尿器系とは  122 ◆2泌尿器系の位置と構造  123 ◆3ネフロンと尿の生成  124 ◆4クリアランス(清掃値)  128 第6章 動作のしくみから理解する  131 第1節 動作を支える骨と筋肉  132 ◆1効率よく食物をとるために発達した運動機能  132 ◆2骨と筋肉で身体を動かす  132 第2節 情報を伝えるネットワーク・神経のはたらき  143 ◆1末梢神経から中枢神経、そして筋肉へ  143 ◆2末梢神経の構造  144 ◆3神経細胞の構造と情報が伝わるしくみ  145 第3節 感覚器から脳へ  147 ◆1視覚のしくみ  147 ◆2聴覚と平衡覚のしくみ  149 ◆3嗅覚のしくみ  153 ◆4味覚のしくみ  155 ◆5皮膚感覚のしくみ  157 第4節 身体の司令塔・中枢神経のしくみ  160 ◆1脳の構造とはたらき  160 ◆2脊髄  166 ◆3脳神経と脊髄神経  166 ◆4体性神経と自律神経  167 ◆5神経のルートマップ  168 第7章 生体を維持する恒常性のはたらき  173 第1節 2つの系統があるホメオスタシス  174 ◆1即効性の神経と持続性のホルモン  174 ◆2神経性の調節  175 ◆3ホルモンによる調節  178 第2節 何を調節するのか  180 ◆1血圧の調整  180 ◆2血糖値の調整  183 ◆3水素イオン(pH)の調整  185 ◆4体温の調節  187 第8章 受精のしくみから理解する  193 第1節 連綿と続く生命の営み  194 第2節 男性生殖器の構造と射精のメカニズム  195 ◆1男性外性器の構造  195 ◆2射精のメカニズム  196 ◆3精子の構造と精液の役割  197 第3節 女性生殖器と受精のメカニズム  198 ◆1女性外性器の構造  198 ◆2卵子はどこで生まれるのか  199 ◆3精子と卵子が出会うまで  200 ◆4受精のメカニズム  201 ◆5受精卵から胎児へ  202 ◆6胎児循環のしくみ  204 ◆7性周期とホルモンのはたらき  205 ◆8分娩から出産へ  207 ◆9乳汁の分泌・射乳のしくみ  209 第9章 身体を守る免疫系のはたらき  211 第1節 免疫とは何か  212 ◆1もう1つのホメオスタシス  212 ◆2「自己」と「非自己」を区別する  212 ◆3自然免疫と獲得免疫  212 第2節 非特異的(先天的)防衛機構  215 ◆1生体表面のバリア  215 ◆2生体内の防衛機構  217 第3節 特異的防衛機構の細胞性免疫  220 ◆12つの免疫に関与するリンパ球  220 ◆2抗体とは  222 ◆3細胞性免疫  226 ◆4免疫反応の概要と流れ  226 第4節 がん細胞と免疫  229 ◆1「自己」から「非自己」へ  229 ◆2NK細胞のはたらき  229 ◆3さまざまな免疫療法  230 第5節 胎児と免疫  232 ◆1母親の免疫系は胎児を非自己と認識する  232 ◆2母親(自己)と胎児(非自己)の接点である胎盤  232 ◆3胎児から新生児にかけての免疫  233 第6節 免疫異常とは何か  235 ◆1アレルギー  235 ◆2免疫不全  238 ◆3自己免疫疾患  240 第7節 血液型と輸血  241 ◆1細胞は「自己」を主張する名札をつけている  241 ◆2赤血球の抗原と血清の抗体  241 ◆3輸血に必要な交差適合試験  242 ◆4Rh式血液型で起こる問題  243 第8節 医療関係者と獲得免疫  246 ◆1獲得免疫の種類  246 ◆2患者と医療関係者のためのワクチン  247 さくいん  251

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序文・はじめに・あとがき 等
はじめに

 学生からは「解剖生理学の勉強の仕方がわかりません」「効率よく覚える方法を教えてください」という声をよく耳にします。これらの声は、今までの勉強が丸暗記中心であり、解剖生理学の勉強では覚える量が半端なく多く覚えきれないので出てきたのでしょう。たしかに、解剖学と生理学では覚えなくてはならない知識がほんとうに山ほどあります。でも、果たして覚えることはそんなに多いでしょうか?
 高校で生物をやってきた学生からは「高校の復習になりました」「高校で勉強したことを思い出せて懐かしかった」という声も聞きます。高校の生物ではかなり難しいことをやっているようです。
 筆者は高校の生物で赤点をとったくらい大嫌いだったので覚えていませんが、参考書を見ると、国家試験では難問に分類される酸素解離曲線すらやっています。もちろん、高校で生物をとっていない学生もいます。でも、中学の理科2分野でも「生物のからだ」という内容でかなりのことを学習しています。
 たとえば、神経細胞は細胞体、樹状突起、軸索などからできている、と。さすがに「髄鞘」は「髄しょう」とひらがな表記になっています。血液の循環では心臓のつくりや血液循環の経路で大きな血管は大まかですが勉強しているのです。
 肺のつくりでは肺胞という小さな袋に網の目のように毛細血管が分布し、ここで心臓からきた血液との間で酸素と二酸化炭素のガス交換を行うことは中学理科でも勉強します。また、人体を含む生物は化学物質なので、化学の知識も必要になりますが、中学理科の1分野で化学反応や原子・分子、イオンについてある程度は学んでいます。ただ高校で生物や化学をやらないと3年間のブランクが解剖生理学を難しく感じさせるのでしょう。それに3年も経てば忘れてしまいます。高校で生物や化学をとってきた人より不利だと言う人もいるかもしれませんが、それは言い訳だと思います。自分の将来に必要ならば必死になって勉強してください。
 勉強していくとわからないことが出てきます。いちいち調べているとなかなか前に進みません。英文読解で、わからない単語をいちいち辞書で引かず、前後の意味のわかる単語から全体の意味をなんとなく把握するように、まずはひと通り軽く理解して、徐々に深く掘り下げていくのがよいと思います。もちろん、全部を覚えて理解することは大事ですが、範囲も広く全部覚えるのは不可能でしょう。
 教科書に書かれていることを理解するのは難しい。でも、ある現象を医学という視点からだけ見ても難しいだけのこともいくつかの異なる学問分野から眺める、つまり学際的な視点で見ると理解が深まることもあります。本書では、COLUMNやMEMOで雑学を交えて本文で書けなかったことを織り交ぜて書いてあります。本書を教科書の理解を深めるための「副読本」として活用し、おもしろく学んでほしいと思います。
2015年2月
著者 増田敦子

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