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具体的なジレンマからみた看護倫理の基本
具体的なジレンマからみた看護倫理の基本
著者名 責任編集:坪倉繁美(国際医療福祉大学保健医療学部看護学科長・教授)
発行年月日 2015年9月28日
判・頁数 A5判 200頁
ISBN 9784907176372
定価(10%税込) 定価 2,860円(10%税込)
在庫 在庫あり 
書籍概要
「服従か主張か」「真実を言うべきか、偽りも方便か」。看護師としての倫理観が問われる様々なジレンマの事例を通して、めざすべき姿を問う。「こんな時はこうする」と言ったマニュアルではなく、何を主軸に考え、どうすべきかという考え方の筋道がわかる内容。
書籍目次詳細
【目次】 序 章 臨床のジレンマと看護倫理 第1章 総論  看護倫理を学ぶ意義  看護倫理とは  看護倫理を考える前に認識しておくべき諸要素 第2章 具体的なジレンマ事例  1.明確にすべきか曖昧のままでよいか  2.真実を言うべきか偽りも方便か  3.本人の利益か家族の利益か  4.患者のニーズ優先か専門家の根拠優先か  5.患者の主張の正しさかスタッフの主張の正しさか  6.こちらの重症患者かあちらの重症患者か  7.服従か主張か  8.平等か効率か  9.拘束(規制)か解放か  10.組織か個人か 巻末資料  ・看護者の倫理綱領 ・ICN看護師の倫理綱領 ・患者の権利に関するWMAリスボン宣言 ・ヘルシンキ宣言 ・プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドライン ・医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン

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序文・はじめに・あとがき 等
はじめに  看護者は、患者の身になって考えるということを価値観にして仕事をしている。看護倫理の基本は、まさに患者の身になって問題をとらえ直すことである。看護倫理のとらえ直しは、患者の「人権」や患者の「自由意思を尊重」した「最善のかかわり」を「内省」することである。  本書は、臨床現場で日々遭遇する倫理的ジレンマを用いて内省的にとらえ直すことを試みた。看護倫理を学ぶ看護学生はもちろんのこと、倫理的な悩みを抱える現場の看護者も、事例をとおして内省できるように構成した。入院患者とその家族は、生と死の危険な状況のはざまで揺れ動き、将来の成り行きに対して不安になるものである。患者の療養生活には多くの職種が協働しながら、回復へあるいは安楽な死へと援助する。なかでも患者の療養に最も近い存在として認識されているのが看護師であり、患者の真の考えや思いをキャッチできる立場にある。他方、看護者は診療の補助者としての役割があり、医師の指示によって看護行為を決めている面もある。時には、患者と医師 の間で利益が衝突する場面に遭遇することもある。  患者の立場からすると、日々進展する医療技術に期待する、あるいはそれを最大限に享受したいという思いがある。しかしながら、享受するうえでの利益と害についての情報が十分に伝えられていないこともある。そのような場合、患者は総合的な情報をとおして正確な意思決定ができる状況にはない。このような不利な状況を打開するための患者の権利の主張は当然であり、看護者はそれに相応した態度や判断力を身につけることが重要である。  また、看護者は医師をとりまく専門家チームの一員としての立場であり、患者の苦悩も理解できる立場であり、家族の立場についても理解できる。多くの人間のはざまで非常に複雑な状況に置かれることになり、看護判断も迷うことが日常的に多い。  看護者の能力として、「患者の置かれている立場の代弁ができること」「患者・家族と専門家の間にある情報の格差による利益と不利益が認識できること」「病院組織やチーム医療のなかでの立場を認識したうえで、正義に基づいた主張ができること」などが望まれる。いずれの能力の向上のためにも、置かれている立場の理解や主張の背景に潜む本音についての理解が必要であり、それらの総合的な理解を通して「倫理的な意思決定」をすることが望まれる。  事例には、患者の望むこと、家族の望むこと、かかわる専門家個々の認識や関連性、専門家同士の信頼関係など、看護倫理をとりまく状況や要素を盛り込んだ。事例には、「倫理的な課題をはらむもの」と、「制度やシステムを改善することによって課題の解決が図られるもの」とが混在するため、事例の解説は2つの課題を分けて検討したので参考にされたい。  この本が、皆さんの看護倫理の基本を学習するうえでの大きな助けになれば幸いである。 2015年8月 坪倉繁美

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