トップ  >>  書籍詳細
看護学生のための精神看護技術
看護学生のための精神看護技術
著者名 編著:水野 恵理子(順天堂大学大学院医療看護学研究科教授)、上野 恭子(順天堂大学大学院医療看護学研究科客員教授)
発行年月日 2023年8月10日
判・頁数 B5判 192頁
ISBN 9784867490143
定価(10%税込) 定価 2,750円(10%税込)
在庫 在庫あり 
書籍概要
精神看護の基盤となる理論から、病院内で安定を促す看護、病院から社会への移行を整える看護、社会における自律を支える看護について、その援助に必要な理論と技術をまとめた。
書籍目次詳細
主な内容
第1章 精神看護の基盤となる理論
 ①フロイトとエリクソンの理論
 ②バイオサイコソーシャルモデル
 ③倫理的な考え方 寺岡征太郎 29

第2章 病院内で安定を促す看護
 第1節 生物学的側面の理解と技術
 ①安心・安全感を導くケア:ポリヴェーガル理論
 ②アドヒアランス
 ③リラクセーション
 第2節 心理・社会的側面の理解と技術
 ①ペプロウの対人関係理論に基づく看護
 ②認知行動理論に基づく看護
 ③コミュニケーション
 ④集団(グループ)を対象とした看護

第3章 病院から社会への移行を整える看護
 ①オレム・アンダーウッドのセルフケア理論
 ②ストレス理論、ストレス脆弱性モデルを用いた看護
 ③ストレングス、エンパワメント、レジリエンスを引き出すかかわり

第4章 社会における自律を支える看護
 ①リカバリーモデル
 ②危機理論
 ③家族システム理論

続きを読む

序文・はじめに・あとがき 等
新型コロナウイルス感染症の感染者が国内で初めて確認された2020年1月から現在まで、私たちは生命の危険を身近に感じ、生活の変化を余儀なくされた。当初マスクが店頭から消え、閑散とした通勤電車と街並みの様変わりを目にした。同時に、ソーシャルディスタンスの確保のため、学校や職場では遠隔授業やテレワークが当たり前となり、人との直接的かかわりが希薄となった。その結果、慣れない環境に戸惑いやいらだち、孤独感や不安をもった人々で社会全体が揺らいだものだ。この感染症のほかにも地球規模の気候変動や災害などによって、現代の人々の日常は脅かされ続けている。このような状況が、人々の心の健康にも少なからず影響をもたらし、精神的ケアに期待がかかっていることは疑う余地がない。
 ところで、人と人とのかかわりを基本に据えた看護学を学ぶみなさんにとって、今回の感染症はどのような体験になっただろうか。患者さんや同僚など人々との関係のあり方や精神にかかかわる援助に関する意識の変化があったと推察する。その一方で形として見えず、自分の主観的判断となりやすい精神の援助方法に自信がもてず、戸惑いを感じることはないだろうか。臨床の場では、看護実践は経験知が幅を利かせる傾向がある。これはもちろん必要なことではあるが、経験のみでは実践の質向上に限界が生じ、想定外の事象への対応にお手上げ状態になってしまうだろう。何より、若い看護職にとっては、その技術が使えないということにもなり得る。
 そこで編著者らは、よくいわれる「科学的根拠をもった看護」「看護はサイエンスであり、アートである」ということに今一度立ち戻った。本書には多くの理論を示している。理論は先人たちの臨床知や卓越した観察眼だけでなく、何度も繰り返された研究成果をもとに証明された考えである。その理論を根拠にして成り立つ技術を使って実践に移していくことが、今からの精神看護には重要であるとの信念をもち、本書の刊行に着手するに至った。
 本書の特徴は、精神看護の基盤となる大理論やモデルから始まり、続いて中範囲理論や実践理論を取り入れながら、入院治療による病状の安定化を促す援助に必要な生物的・心理的・社会的側面の視点に立った援助の考え方や技術、病院から地域生活への移行期の生活を整える援助の考え方と技術、さらに安定した地域生活の持続を支える内容を示し、精神障害者の病状や状況を経時的に考え構成した。また、リエゾン精神看護領域での事象にも役立つ内容が多く含まれ、それぞれ関心のある項から読むことが可能である。
 各章は看護学生が理解しやすいように理論やモデルを紹介し、それらに基づいた実践例や事例を提示した。そして、本文の理解を助ける図表やイラスト、コラムを盛り込み、活用しやすいものになることを心がけた。実習前の準備や実習中に本書を手にしながら事象や患者さんをはじめとする対象理解を深め、実りある看護実践を展開できることにつながれば幸甚である。
 最後に、ご多忙のところ本書の刊行にご尽力くださった執筆者の皆様、学生が抱きやすい精神看護に対する抵抗を緩和するための本書について常に考え、終始ご支援くださったサイオ出版編集部に心より感謝申し上げる。

続きを読む


page top