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看護の環境と人間工学
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書籍概要
患者の移動・移送、体位変換、排泄援助など、看護のあらゆる場面において、人間工学に伴った動作が必要になっている。本書では、看護に関わる姿勢・動作のあり方、看護に関わる安全の考え方、バリアフリーとユニバーサル・デザインについて考え、看護初学者に人間工学のおもしろさを伝授。患者のQOLを支え、患者の安全・安楽に向け、また、看護者自身の安全にもつながる動作をわかりやすく解説。これまで、あまり気にせず行っていた看護動作一つひとつが「なるほど!」「納得!」と理解できる。
書籍目次詳細
はじめに
1章 人間工学のあらまし
2章 看護の創意・工夫とアイデア創出
3章 看護に関わる五感とセンサについて
4章 観察とフィードバック
5章 看護とフィードバック制御
6章 人間の構造と看護姿勢・動作
7章 看護動作を理解するための物理・力学
8章 負担軽減のための基礎力学
9章 ボディメカニクスとはなにか
10章 ボディメカニクスを理解するための実験
11章 人-物-人の安全を考える
12章 看護の安全を考える
13章 看護の事故防止対策について
14章 医療用電子機器とフィードバック制御
15章 バリアフリーとユニバーサルデザインと人間工学
さくいん
1章 人間工学のあらまし
2章 看護の創意・工夫とアイデア創出
3章 看護に関わる五感とセンサについて
4章 観察とフィードバック
5章 看護とフィードバック制御
6章 人間の構造と看護姿勢・動作
7章 看護動作を理解するための物理・力学
8章 負担軽減のための基礎力学
9章 ボディメカニクスとはなにか
10章 ボディメカニクスを理解するための実験
11章 人-物-人の安全を考える
12章 看護の安全を考える
13章 看護の事故防止対策について
14章 医療用電子機器とフィードバック制御
15章 バリアフリーとユニバーサルデザインと人間工学
さくいん
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序文・はじめに・あとがき 等
まえがき
物理を高校で履修していない学生が多い看護大学、看護専門学校で人間工学の講義を行い20年が経過しました。人間工学は面白くためになる内容ばかりですが、「人間工学」という文字をみただけではその内容がよくわかりません。人間を対象にして考える科学技術分野ですから、範囲が広く何をどうして扱うのか全くわからない分野だと受け止められているようです。しかし、幅広い範囲を含む分野ですが、ひとたび内容を知ると大変おもしろく興味をもてる分野であることに気がつきます。
その昔ロボット研究を行っていたころ、ロボットを人間なみに動かすために人間の動作研究を行っていたことがあります。それが縁で、看護師は腰痛を発症することが多いと聞き、その分野の動作研究を行うようになました。さらに動作研究の成果を発表できる日本人間工学を知り、この分野に興味をもち人間工学会の会員になり今日に至っています。人間工学会の中には部会がいくつかあって、その中の1つに看護人間工学部会があります。この部会は毎年1回研究集会が開かれ本書に述べるような内容の研究が発表されます。このように人間工学は人間に関わる広い分野の科学研究ですので、わかりにくいのは当たり前かと思います。
しかし、看護や介護の分野に限るなら、例えば高齢者あるいは患者の車椅子を開発し、その乗り心地や操作性について研究や、患者を持ち上げ移動あるいは移乗するような患者の安楽度の研究、看護師が発揮する力や姿勢のありかたなどが定量化する研究などは看護師の作業負担という切り口でアプローチすることができます。
看護師の腰痛発症は多いといわれています。その原因は何でしょうか。それは、仰臥している重い患者の介助・支援業務を行うときに不自然な姿勢で動かすとか、ベッドから車椅子への移乗を行うときに起こすことが多いのです。こうした場面において人間工学の一分野であるボディメカニクス技術を活用できるなら負担は軽減でき、腰部障害を被る可能性も減ります。本書に述べる看護情報、看護業務に関わる創意・工夫、ボディメカニクス、姿勢・動作、看護の安全、医療機器の使いやすさ・安全など看護の情報・教育に関わる研究は、全て人間工学の範疇に入ります。
身体を屈曲させたときに発症する可能性の高い腰痛の話し、重い荷物を持つときに生じる身体負担の話しなどをする場合には力学の説明も必要です。力は目に見えませんので、出した力がどのようにはたらき、その作用がどうなるかがわかりにくいのです。
人間工学は私たち人間が生きていくうえで大変重要な役割を果たしています。それは、私たちの身近にある全ての物はわれわれ人間のために創造されているものばかりです。その物を創造する場合にまず考えなくてはならないことは、人間が使うということを大前提にすることです。使いやすくて、使ってみて安全であることを十分に考慮しながら設計・製作を行う分野が人間工学なのです。
人が日常使う物には、食器類、台所用品、机・椅子、各種電化製品など枚挙にいとまがないほどあります。このような物は人が使うために作られていますので、使って安全で便利なものばかりです。つまり、危険のない安全な道具や機械の配置、それらの設置場所を考えて作られています。こうした物を製造する作業者の安全と能率・効率を配慮する分野も人間工学なのです。
看護業務を行う環境の中には、医療器機や医療用具としての物はたくさん存在しています。体温計1つとっても、早く正確に患者の体温が測定できるようにいろいろと工夫がなされています。また、血圧計は水銀を押し上げる方法で聴診器を使っていたものが、マイクロフォンを使う自動血圧計に進化しました。こうした、安全で正確・高精度で使いやすい医療器具の誕生をもたらしたのも人間工学の成果なのです。
人間工学は創造が重要な役割を占めています。そこで、本書では、看護に関わる情報の考え方、看護に関わる姿勢・動作のあり方、看護に関わる安全の考え方、それに最後にバリア・フリーとユニバーサル・デザインについても考えてみました。
人間工学は面白いし、大変ためになるという声を看護学校での講義の終わりに聞くことができます。それなのに、なぜ面白い人間工学の知名度は低く、普及しないのかといつも疑問に思っています。知名度を上げ普及したく、少しでもわかり安くしたつもりで何冊かの看護に関わる人間工学の本を世に出しました。本書もその考え方は同じで、いかに看護初学者に人間工学を理解してもらえるかを考え、できる限りわかりやすく理解してもらえるように努力したつもりです。最後まで読み進んでいただき、自身のまわりの物を見つめる目、新しい物を生み出す目が育っていただければ望外のよろこびです。
2015年2月1日
小川鑛一
物理を高校で履修していない学生が多い看護大学、看護専門学校で人間工学の講義を行い20年が経過しました。人間工学は面白くためになる内容ばかりですが、「人間工学」という文字をみただけではその内容がよくわかりません。人間を対象にして考える科学技術分野ですから、範囲が広く何をどうして扱うのか全くわからない分野だと受け止められているようです。しかし、幅広い範囲を含む分野ですが、ひとたび内容を知ると大変おもしろく興味をもてる分野であることに気がつきます。
その昔ロボット研究を行っていたころ、ロボットを人間なみに動かすために人間の動作研究を行っていたことがあります。それが縁で、看護師は腰痛を発症することが多いと聞き、その分野の動作研究を行うようになました。さらに動作研究の成果を発表できる日本人間工学を知り、この分野に興味をもち人間工学会の会員になり今日に至っています。人間工学会の中には部会がいくつかあって、その中の1つに看護人間工学部会があります。この部会は毎年1回研究集会が開かれ本書に述べるような内容の研究が発表されます。このように人間工学は人間に関わる広い分野の科学研究ですので、わかりにくいのは当たり前かと思います。
しかし、看護や介護の分野に限るなら、例えば高齢者あるいは患者の車椅子を開発し、その乗り心地や操作性について研究や、患者を持ち上げ移動あるいは移乗するような患者の安楽度の研究、看護師が発揮する力や姿勢のありかたなどが定量化する研究などは看護師の作業負担という切り口でアプローチすることができます。
看護師の腰痛発症は多いといわれています。その原因は何でしょうか。それは、仰臥している重い患者の介助・支援業務を行うときに不自然な姿勢で動かすとか、ベッドから車椅子への移乗を行うときに起こすことが多いのです。こうした場面において人間工学の一分野であるボディメカニクス技術を活用できるなら負担は軽減でき、腰部障害を被る可能性も減ります。本書に述べる看護情報、看護業務に関わる創意・工夫、ボディメカニクス、姿勢・動作、看護の安全、医療機器の使いやすさ・安全など看護の情報・教育に関わる研究は、全て人間工学の範疇に入ります。
身体を屈曲させたときに発症する可能性の高い腰痛の話し、重い荷物を持つときに生じる身体負担の話しなどをする場合には力学の説明も必要です。力は目に見えませんので、出した力がどのようにはたらき、その作用がどうなるかがわかりにくいのです。
人間工学は私たち人間が生きていくうえで大変重要な役割を果たしています。それは、私たちの身近にある全ての物はわれわれ人間のために創造されているものばかりです。その物を創造する場合にまず考えなくてはならないことは、人間が使うということを大前提にすることです。使いやすくて、使ってみて安全であることを十分に考慮しながら設計・製作を行う分野が人間工学なのです。
人が日常使う物には、食器類、台所用品、机・椅子、各種電化製品など枚挙にいとまがないほどあります。このような物は人が使うために作られていますので、使って安全で便利なものばかりです。つまり、危険のない安全な道具や機械の配置、それらの設置場所を考えて作られています。こうした物を製造する作業者の安全と能率・効率を配慮する分野も人間工学なのです。
看護業務を行う環境の中には、医療器機や医療用具としての物はたくさん存在しています。体温計1つとっても、早く正確に患者の体温が測定できるようにいろいろと工夫がなされています。また、血圧計は水銀を押し上げる方法で聴診器を使っていたものが、マイクロフォンを使う自動血圧計に進化しました。こうした、安全で正確・高精度で使いやすい医療器具の誕生をもたらしたのも人間工学の成果なのです。
人間工学は創造が重要な役割を占めています。そこで、本書では、看護に関わる情報の考え方、看護に関わる姿勢・動作のあり方、看護に関わる安全の考え方、それに最後にバリア・フリーとユニバーサル・デザインについても考えてみました。
人間工学は面白いし、大変ためになるという声を看護学校での講義の終わりに聞くことができます。それなのに、なぜ面白い人間工学の知名度は低く、普及しないのかといつも疑問に思っています。知名度を上げ普及したく、少しでもわかり安くしたつもりで何冊かの看護に関わる人間工学の本を世に出しました。本書もその考え方は同じで、いかに看護初学者に人間工学を理解してもらえるかを考え、できる限りわかりやすく理解してもらえるように努力したつもりです。最後まで読み進んでいただき、自身のまわりの物を見つめる目、新しい物を生み出す目が育っていただければ望外のよろこびです。
2015年2月1日
小川鑛一
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